最近、大学院の後輩やIHEIDに興味を持ってくださっている方からインターンについて質問を受ける機会が増えました。確かに、インターンはいわゆる課外活動にあたるので、なかなかIHEIDの学生がどのようなインターンをしているのかについては情報収集がしにくいとも言えます。
そこで、今回の記事ではインターンに関するFAQをまとめてみたいと思います。
最初にお断りを入れておきたいのですが、私のインターン経験と友人の経験、友人たちから聞いた話を元にお答えすることになります。学校全体の統計を取れているわけではないので、もしかすると情報が偏っている可能性もあることをご承知おきください…
Q. インターンはした方がいいですか?
A. 人によります。
インターンはした方がいいのか、なぜした方がいいのかと聞かれることがあるのですが、本当に人によると思います。
職務経験がある方は焦ってインターンをする必要もないかもしれませんし、逆に長い職務経験があるからこそインターンではなく院生をしながら普通に働いている人もいます。インターンをした方がいいかどうかは、自分の卒業後のプランやキャリアゴール、留学スケジュールや目的などを総合的に考えて判断すれば良いのではないでしょうか。
参考までに、私がインターンをしようと決めた理由をまとめておきます。
・キャリア、仕事探しのため
私の場合は、ほぼ新卒でIHEIDに来てしまったので(なんなら最初は学士号すらなかった…)職務経験がない状態での仕事探しをすることになり、スイスあるいは国際機関ではとてもハードルが高いです。インターンも微々たるものですが職務経験になりますし、ゼロでスタートするよりかは良いだろうと思って、インターンをしたいと思いました。また、日本でのアルバイトやインターン経験は国際関係と関係がなかったので、ここでインターンをしなければCVでの自分のセールスポイントがないと思ったので、私にとってはインターンをすべきと判断しました。
・ネットワークづくり
ネットワーキングやコネクションはとても大事です。それが仕事につながったりすることも多くあります。インターンをすればその分野で実際に働いている人と知り合うことができるので、それも私がインターンをする目的の一つです。
・勉強していることの実践的な経験や知識を身につけたいと思ったから。
国際関係や開発学を机上で学ぶだけではなく、実際に働いている人たちの間ではどんなことが起きているのかを知りたいと思いました。国際機関やNGOなどが実際にどういう動きをしてどのように世界に貢献しているのか、あるいはどう貢献できていないのか、その組織の中に入って見てみたいと思っていたからです。
・ヨーロッパの働き方がみてみたいと思ったから。
「日本とヨーロッパで働き方が全然違う」とはよく聞くものですが、実際どんな違いがあるんだろう。仕事に対する考え方はどんななんだろう。スイスの働き方と国際機関の働き方はまた違いがあるのか。日本の企業でインターンをしていたことがあるので、実際にこちらでもインターンをして比べて見たいなと思いました。
・留学中の経験の一つ
留学中に、せっかくなのでただ勉強するだけではなくていろいろな経験をしたいと思っていたので、インターンもその一つでした。
Q. インターンはいつ頃したらいいですか?
A. 人によって違いすぎるので、一概には言えません。
2問連続で「人による」という曖昧な答えですみません… が、これも本当に人によりけりです。日本のように、大学3年生の夏にインターン参加して春に就活、などという均一的なスケジュールはないので、自分で勉強量などと相談しながら決めることになります。いくつか例を書いてみますね。
Aさんの場合
1セメスター目 滞在許可書の関係でインターン不可
2セメスター目 授業をたくさんとったので学業に専念
夏休み フルタイムのインターン
3セメスター目 同じ機関で契約をパートタイムに変更
冬休み 1月で契約終了、その後は一時帰国
4セメスター目 卒業論文を書きつつパートタイムのインターン
Bさんの場合
1セメスター目 滞在許可書の関係でインターン不可
2セメスター目 フルタイムのインターン約3カ月
夏休み バカンスを取る
3セメスター目 パートタイムのインターンスタート(完全リモート)
冬休み 冬休みからフルタイムに契約変更、オフィスのあるパリに移住
4セメスター目 パリで卒業論文を書きつつフルタイムインターン
Cさんの場合
1セメスター目 スイス人なので入学前からしていたインターンを継続
2セメスター目 授業が忙しいので学業専念
夏休み バカンス、旅行
3セメスター目 授業が忙しいので学業専念
冬休み 1月は旅行、2月インターン
4セメスター目 卒業論文を書きつつインターン
Dさんの場合
1セメスター目 滞在許可書の関係でインターン不可
2セメスター目 授業が忙しいので学業専念
夏休み フルタイムインターン
3セメスター目 新しくパートタイムインターンスタート
冬休み 自分の国に帰国
4セメスター目 自分の国で卒業論文を書きつつインターン
このように、みんな時期もインターンの長さもバラバラなのです。自分が好きなようにプランをたてればいいのでは、と思います。
ただインターンを始めたい月の2~3カ月前には応募を始めた方がいいと思うので、早め早めからの計画・応募開始をおすすめします。
Q. どこでインターンをする人が多いですか?
A. 国際機関やNGOなどが多いです。
国際関係を学んでいるので、やはり国際機関やNGOなどでインターンをする人が多いです。国際機関といってもいろいろありますが、自分が学んでいる分野に関連している組織やポジションについている人がほとんどです。専門性が求められるので、学業との関連性が問われるのは日本のインターン探しと違うところだと思います。
Q. どうやってインターンを探していますか?
A. いくつかのプラットフォームを使って探しています。
・IHEIDのJob Portal
IHEIDのCareer Service Centerが求人をまとめているサイトです。IHEIDの学生のみアクセスすることができます。入学後にパスワードを教えてもらえます。
普通のインターンだけではなく、IHEIDが学生のアルバイトやリサーチアシスタントを募集している場合もここに載っています。
LinkedInには求人を探せる機能があるので、それを使ってインターンの開いているポジションを探しています。
・CAGI
スイスのNGOやPermanent missionの求人をまとめているサイトです。
Q. 留学生でもスイス人と同じようにインターンが見つかりますか?
A. 100%同じように、というわけにはいかないですが、留学生でも見つかります。
IHEIDは70~80%の学生が留学生ですが、私の友人たちはほぼ全員何かしらのインターンを見つけて経験しているので、留学生であるからといってインターンが見つからないということはないです。
ただ、やはりスイス人の方が有利だなと思うことはときどきあります。(時にはヨーロッパ人も)理由は、
・留学生はスイスに来てから半年はインターンも含め、働くことができないという制約があります。半年経てば働けるので、これはそんなに問題ないです。
・インターンの募集要項に「EU国籍の人限定」という記載をときどき見かけるので。労働ビザの関係だと思います。
・フランス語やドイツ語が必須のポジションもよくあります。もしフランス語やドイツ語がビジネスレベルで使えれば問題ないと思います。
UNをはじめとする国際機関でインターンをする場合はCDLを発行してもらえるので、特に留学生であることのデメリットはないように思います。
※CDLとは:国際機関が、そこで働く人やインターンに発行する滞在許可書のようなもの。これがあれば、国際公務員として、オフィスがある国や州の労働ビザや労働許可証がなくてもそこで働くことができます。例えば、ジュネーブの国連でインターンをするのであればCDLをもらえるのでジュネーブ州の労働許可がなくても、外国人がジュネーブで働くことが可能です。
Q. どうやって授業とインターンを両立させていますか?
A. フルタイムとパートタイムでかなり状況が違います。
パートタイムの場合は、自分で調整している人がほとんどです。インターンの募集に週何時間と書いてあるので、自分が両立できるものを選んで応募します。
フルタイムの場合は、3セメスターまでに全ての授業を取り終えて最後のセメスターに卒業論文を書きながらフルタイムでインターンをする人が多いです。2セメスター目にフルタイムをしている人も数人いましたが、その場合は授業がある時間だけ仕事を抜けて、授業が終わったらまたオフィスに戻るという方法でやりくりしていたようです。が、個人的にはあまりおすすめしません…授業は出ればいいわけではなくリーディングなど予習が必要で、フルタイム+4~5授業だとほとんどプライベートの時間はなく、かなりきついスケジュールになるからです。(実際に忙しすぎて死にそうになっている友達を何人も見かけました…)
Q. インターンは単位に換算されますか?
A. 私が所属しているIHEIDのMINTに関しては換算されます。
MINT(Master in International and Development Studies)では最大1年のインターンを3単位に換算されるカリキュラムになっています。例えば1年間一つのインターンをした場合も、6カ月のインターンを二つした場合も、両方3単位になるというような仕組みです。
留学生は基本的にフルタイムのインターンは法律上禁止されているのですが、インターンを単位を換算する場合のみフルタイムのインターンもすることができます。そのため、この単位換算ができるか否かが重要になってくるのです!
単位換算をする場合は、インターンを始める前と終わった後の両方で手続きが必要です。インターン先からもらった証明書の提出とGoogle Formを通しての報告などが必要です。MINTのオフィスにメールで聞けば、親切に答えてくれてオンラインで手続きが全てできるので、とても簡単でした。
仮にインターンをしなかった場合は、代わりにWorkshopを1つ多く履修することになります。Workshopとは実践的なスキルを身につけるための授業で、基本的には1つのWorkshopにつき2日間で終わります。内容としては、Implementation of development projectsやNegotiation in multilateral development, How to create podcastsなどがあり、実際にロールプレイをしたりポッドキャストを作ったりします。
Q. ARPとの違いはなんですか?
A. ARPはMINTのカリキュラム内のプロジェクト、インターンは課外活動です。
ARPはカリキュラム内で全員が必修のリサーチプロジェクトです。IHEIDが国際機関やNGOなど外部機関と提携してリサーチプロジェクトを用意、学生全員が必ずどれかのプロジェクトにアサインされて、チームごとにリサーチをして結果をまとめます。リサーチ、プレゼンテーションなど全てにおいて単位がもらえます。(Failしなければですが笑)
一方でインターンはカリキュラム外ですから、もちろん自分でインターンを探す必要があります。そして、インターンの業務はリサーチだけとは限らないので、広報の手伝いをしたり、イベントの準備を手伝ったり、クライアントとやり取りをしたり、ポジションによって業務は多岐にわたります。インターンでも単位はもらえますが、必須ではありません。申請すれば3単位までもらうことができます。
ARPについてまとめた記事があるので、気になる方は参考にしてくださればと思います。
Q. インターンから就職につながることはありますか?
A. なくはないですが、あまり多くはないと思います。
まず、基本的に多くの国際機関、特に国連の機関はインターンの契約を延長してくれることはほぼないです。求人情報を見ても、「このポジションは契約の延長はないです」「employmentにはつながりません」などと明記してあるものばかりなので、直接インターンから正規のポジションの就職につながることはほぼないと思って良いでしょう。
NGOなどで働いている人やいくつかの国際機関では例外的にインターンからコンサルタントに昇格してもらえたという場合もあるようです。ただコンサルタントも短期契約かつ不安定、そしてとてもお給料の低いポジションなので、果たして「就職」と呼んでいいのかどうか…
他のパターンでは、そのままインターンから就職というルートではなくとも、インターンで知り合った人が(そのインターンを辞めた後に)自分の専門分野のポジションが空いたからと声をかけてくれたりすることもあるようです。直接の就職につながらなくとも、インターンで培ったコネクションが仕事につながることもあるとは思います。
最後に
私がここで感じたこととして強調したいのは、基本的に自立性が求められるということです。特に日本の大学にいた場合、自分で全く動かなくとも大学3年生になればだんだんとみんなインターンとか就活の話になり、そろそろやらなきゃな〜と動き出すことになると思いますが、ここではそういったことは全くありません。
日本人の方は特に、「いつ頃インターンをしたらいいですか?」などIHEID内での一般論を知りたいと質問してくださる方が多いのですが、上述したように一人一人スケジュール感もそれまでのキャリアも卒業後のプランも全く違うので、友達がインターン探し始めたから私も〜というのは通用しないですし、その感覚でいると完全に取り残されて気づいたら2年間が終わっていたということになりかねません。自分のキャリアゴールから院生生活のプランをしっかりとたてて自発的に行動することが肝となると思います!